最高裁判所第一小法廷 昭和34年(あ)261号 判決 1960年5月26日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人向江璋悦、同安西義明の上告趣旨第一点は共犯者の自白のみを唯一の証拠として被告人の騙取の共謀を認定するのは違憲違法であると主張するが、この点に関する原判示の正当であることは所論摘示の判例(昭和二九年(あ)一〇五六号、同三三年五月二八日大法廷判決)の示すところであるのみならず原判示には共犯者の自白のほかさらにその自白の補強証拠の存することも認めているのであるから、所論は採るを得ない。同第二点ないし四点は違憲をいう点もあるが、実質は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張に帰し、上告適法の理由とはならない。同第五点は違憲をいうが、その実質は、刑法六〇条の解釈適用を誤った違法があるというに過ぎないものであるところ、所論の理由のないことは前掲大法廷判決の示すところであるから採るを得ない。
よって刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。
この判決は裁判官高木常七において前掲判例の小数意見に賛同するほか裁判官全員一致の意見によるものである。
(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)